THE UNEXPLAINED ISSUES
オリンピックを主催すると観光客がホントに増えるのか?実際、開催決定後に増えたのか?というギモンニュースを見ていると、2020年に向けてインバウンドマーケットが当然拡大するかの様に語られていますね。2020年に観光客が増えるのは分かりますが、どうしてその前段階で増えるのでしょうか? 上のグラフは、JNTOの「訪日外客数の動向」というデータを元に作成したものですが、確かにオリンピック開催決定後の2013年以降、訪日外国人数が増えています。実は政府は2003年から、ビジットジャパンというキャンペーンを展開しており、そこから徐々に増加傾向ではありますが、リーマンショックのあった2008年から2012年は上がったり下がったりといった状況でした。 この訪日外国人数の増加はオリンピック効果なのかというギモンオリンピックに合わせて官主導で頑張った、そして幸運にも恵まれた、といったところでしょうか。オリンピックに合わせてプロモーションを強化し、東南アジア・中国からの顧客呼び込みに向けビザを緩和するという戦略が大当たりしました。実は、ビザ緩和は2010年から段階的に施行されて来ていましたが、東日本大震災の影響もありオリンピック候補地決定の2013年前後に効果が現れ始めたというのもあるようです。また、この時期戦略的ターゲットである中国の一人当たりGDPが伸びに伸びて、それに伴い海外旅行者数もうなぎ上りだった訳です。では何が幸運だったかというと、アベノミクスの金融緩和策が功を奏し2013年から2015年の間は円安基調となり、日本への旅の割安感がましたのです。さらに2014年後半からは、原油価格の大幅下落に共ないサーチャージ(燃油特別負荷運賃)が急落するというおまけまで付いてきました。しかしマーケットは水もの。中国のGDPの伸びは鈍化、為替も2016年には海外情勢を受け円高に転じたりと、今後に向けて不安要因となっています。 今後の戦略は2016年、2017年と観光庁の予算は大きく増額されました。それまでの全予算を優に超える130億円が「インバウンド」と名のつく費目に割り当てられます。旅館や飲食店等、受け入れる側の環境整備に多く割り当てられるようです。 さすがに中国頼みオンリーでは、今後の中国経済いかんによって、インバウンド経済自体が揺さぶられてしまいます。したがって、今後は長期滞在志向の高い欧米顧客にターゲットを拡大、日本の歴史・文化をアピールする意向です。オリンピックが観光産業に長期的に貢献した事例としてよくロンドンが取り上げられますが、どうやらこのロンドンモデルを特に参考にしているようですね。 過去のイベントを比較したデータを、大手コンサルティングファームのMcKinseyがまとめていますが(下図参照)、確かに一番左のロンドンオリンピックが傾向としては伸びているようにみえます。ただし、このグラフには現れていませんが長期トレンドでみるとどの国際イベントでも大体伸びています。そもそも世界の海外旅行者数が伸びているから当然といえば当然なのです。個人的にはロンドンの場合、直後に航空不況(2001年から)もなく、リーマンショック(2008年)もなく、運が良かったなと思っています。とにもかくにも、観光庁はロンドンオリンピックの以下の点がお気に入りのようです。❶イギリス全土の歴史・文化・自然を継続的にPRし、イギリスブランドを向上させた点、❷長期的な地方への観光客誘致。確かに良さそうです。 オリンピック効果の地方波及は可能かというギモンこれはなかなか一筋縄では行かなそうです。ゴールデンルートという言葉がよく聞かれますが、やはりお初に日本に来た方はメジャーな観光地をカバーしたいと思うものです。日本人が「パリ・ロンドン・ミラノ7日間」ツアーに申し込むようなものです。欧米人は日本人に比べて滞在期間が長い傾向にありますが、2週間居たとしても彼らにとっては、東京4日、京都3日、箱根に大阪も巡るとなると結構いっぱいいっぱいだね、という感覚です。昨今は旅行者がweb特にSNSから情報を取ることも少なくないようですが、その筆頭はミレニアル世代です。若さゆえ日本は初という彼らはゴールデンルートを巡る。するとSNS上の魅力的な写真もゴールデンルートであふれ返る。そしてそれを見た人がゴールデンルートに行く、と、ねずみ算的に増えて行くわけです。下の図はアメリカで実施されたサーベイの結果ですが、ミレニアル世代がSNSの影響を受け(左図)、SNSにフィードバックしているのがよく分かります。ここからは根拠が薄くて恐縮ですが、ミレニアル世代は旅程についても、web上の他人の意見を参考にしているのではと思っています。Redditという英語圏の掲示板があるのですが、ここのJapan Travelの板では「Itinerary Check(旅程チェック)してくれ」という書き込みがよく見られます。そこで九州とか四国の端を旅程に組みこもうものなら、「おいおい、そんな無理して行かなくても」みたいなツッコミが入ってくるのです。 という訳で、「Itinerary Contest」みたいなものをSNS上で展開して、ミレニアル世代の旅行者たちに魅力的な観光ルートを開発してもらっては、と思うのですが。そして、どんどん「SNS映え」する写真をアップしてもらえばと。いかがでしょう、観光庁さん。もしくは、地方は徹底的に高齢層を狙うか。地方といえば自然、自然といえば地方。しかしながら、World Economic Forumの旅行先ランキングで見事4位にランクインした日本ですが、相対的に自然の評価は低いようです。未だ未だ自然についての発信が足りないのでしょうか(下図)。ガンバレ日本!
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