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THE UNEXPLAINED ISSUES

ニュースノギモン

原発ゼロって本当に可能ですかというギモン

9/27/2017

5 コメント

 
原発ゼロの世界は

原発ゼロの実現性は、課題は

原発ゼロの壁となる経済優位性を検証

衆院選も蓋を開けてみれば自民党の大勝に終わり、一時希望の党が争点にあげた「原発ゼロ」は宙に浮いてしまいました。確か東日本大震災の後にも当時の民主党政権が原発ゼロを掲げましたが、その後の政権交代によりなし崩しの状況です。実際問題「原発ゼロ」というのはどの程度実現可能なのでしょうか?
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発電量構成推移 出典:経済産業省、エネルギー白書2017
上の図は、経済産業省の「エネルギー白書2017」から引用した、日本の発電量構成の図です。2015年度時点で原子力は1.1%。なんとか他の電源でカバーできそうですね。ところが今の政府、電力会社の意向としては、原発再稼働を目指しています。それは、原子力はLNG火力等に比べて燃料費比率が低く、一度作ったら運転コストが安く抑えられるからです。という訳で既存の発電設備があるのに、稼働できないのは経営者としては「もったいない」と言わざるをえません。「なんだカネか」と思われるかもしれませんが、電力自由化とはいえ、日本の電力のほとんどが従来の大手電力会社から供給されていますので、彼らのコストが上がるということは、我々利用者の懐も直撃する訳です。

本当に原子力は安いのかというギモン

では本当に原子力はそんなに安い電力なのでしょうか?アメリカの原子力は高コストで、市場価格ではペイしないと、ニュースでご覧になられた方もいるかもしれません。確かにEIA(エネルギー情報局)のデータによると、ガス火力はおろか風力より太陽光より発電コストが高いとされています。しかし日本とアメリカでは、発電所の建設・運転のための条件が大きく違います。ひとつには、アメリカはシェールガスという今まで掘削されたなかった天然ガスの開発が進み、ガス火力発電のコストが大幅に下がりました。島国の日本と異なり、天然ガスを液化して船で運搬し、再度ガス化するといったコストも不要です。また、アメリカの広大な国土で、風力・太陽光各々最適な立地に建設するのと、日本の狭い国土に小規模に建てていくのとでは、再生可能エネルギーのコストも大幅に違ってくるのが、容易に想像がつくでしょう。
日本の発電コストは、経済産業省の中の資源エネルギー庁「発電コスト検証ワーキンググループ」で2015年度に発表されているので、そちらを参照してみます。下の図は、2014年に運転開始し一定期間運転ののち閉鎖、廃止されるプラントの生涯平均発電単価を比較したものです(2014年モデルプラント)。こうしてみると、やはり原子力が最も経済性が高いといえそうです。
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2014年モデルプラント試算結果 出典:資源エネルギー庁、長期エネルギー需給見通し小委員会に対する発電コスト等の検証に関する報告

原子力のモデルプラントコストに少しギモン

では、10.1円/kwがどの程度妥当なのか。「資本費」と「事故リスク対応費」に先ずは着目したいと思います。資本費を算定する上で建設費「37万円/kw」と見積もっています。比較的最近建設された浜岡原発5号機の建設コストがおおよそ「26万円/kw(138万kw、3600億円)」ですので、当時より建設コストは上がったという数字です。規制・採用技術・資材費・人件費等大きく影響しますので、他の国と一概に比較はできないのですが、米国のEIAによる2016年時点の建設コスト試算(金利コスト抜き)は、$5,945/kw、英国で現在建設中の原子力発電所ヒンクリーポイントは$6,556/kwと大幅に上回っています。個人的には日本で2014年運転開始のプラントとした場合でも、もう少し高く見積もって良かったのではという気がします。

続いて事故リスク対応費、福島原発事故対応費を約12.2兆円と想定していますが、2017年時点で21.5兆円まで膨れ上がってしまったので、もう少し高くなりそうです。費用が1兆円増えるごとに0.04円/kwh増加と提示してくれているので、その分加算してみましょう。21.5兆円を出力規模で補正して16兆円とすると、差額6.9兆円これに0.04円をかけて足した結果、事故リスク対応費は0.57円/kwh。原子力発電コスト全体でみても約10.4円/kwh。原子力優位という試算結果には影響なさそうです。
少ししつこいようですが、2014年モデル試算と前回の2010年モデル試算とを比べてみます。前回は事故リスク対応費想定が5.8兆円(補正値)、2014年モデルは9.1兆円(補正値)ですが、事故リスク対応費は、前回0.5円/kwhに対し今回0.3円/kwh。事故費増加時の単価も0.07円/kwhに対し0.04円/kwhと逆に値下がってますね。上の図3枚目にその根拠が示されていますが、安全対策がなされた結果事故発生リスクが半分になった、のがその要因だそうです。うーん。そうですか。

仮に原発ゼロになるとどうなるのかというギモン

これについては経験値がありますよね。日本中の原子力発電所が稼働停止になった際、日本国民は節電し、電力会社は火力発電所をバンバン回しました。そこで電力会社は、計画外に燃料を調達する必要ができました。そうするとどうなるか。市場から買ってくるものは、需給が逼迫すると値上がりします。日本の電力会社は、契約済みの燃料価格より高値で追加買い付けを行いました。下の図はあいにく2011年初までのデータしかありませんが、燃料価格が上がったので発電コストも大きく上昇しました。
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火力発電コスト推移(9社平均) 出典:IEEJ、電源別発電コスト評価の概要と主要な論点
仮に原発ゼロを推進する場合、準備期間を持って周到に進められるはずですので、3.11以降に経験した急激な燃料費上昇は抑えられるはずですし、既に電力会社も調達コスト低減に向けて努力をされています。しかしLNGで輸入する日本は、下のIEAの図の通り、パイプラインで輸入するより割高にならざるを得ない上に、輸出国から離れていることで他のLNG輸入国より高いお金を支払うことになります(プラス天然ガス価格決定のメカニズムが影響するのでが、詳細割愛します)。
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天然ガス価格比較 出典:IEA, NATURAL GAS INFORMATION: OVERVIEW (2017 edition)
火力発電所をガンガン回すことの不都合は、コストだけではありません。CO2排出量が増えるのです。そこで期待したいのが風力発電や太陽光発電といった再生可能エネルギーです。これらの電源は発電効率が低いので、相対的に発電コストは高くなります。発電コストが高いと儲からないので、誰も投資をしたがりません。という訳で技術進展等によりコスト競争力がつくまでは固定買取制度(FIT)として、補助金により投資を促しているのが今の姿です。朗報としては、製造技術の発展や量産効果により、再エネの発電コストが下がってきているということです。特に太陽光発電は顕著です。Module(パネル)のコストは、2010から2014年の間で3分の1まで下がりました。一方で、日本の太陽光発電コストは、諸外国に比べて高い傾向にあります(下図中央)。日本は依然日本製パネルのシェアが高く、パネル価格が下がりづらい上に、周辺機器・設置工事で2倍の差がつけられています(下図右)。私は以前はメーカー勤務でしたが、日本企業は高機能化というのはすごく得意なのですが、設置のしやすさ・汎用周辺機器の採用によるトータルコスト削減、というような取り組みは苦手だと思います。

再生可能エネルギーが増えるとハッピーかというギモン

原子力をなくして、コストが下がった再生可能エネルギーを増やすと全てうまく行くか、というと案外そうはいきません。再生可能エネルギーは、需要に応じてコントロールすることができません。家に帰って電気をつけて、料理をしてテレビを見て、という時間に太陽は沈みます。蒸し暑くて仕方なくてエアコンを効かせたい時に、外は無風です。となるとどうなるか。当面はその分、ガス火力等で賄う必要があります。ただし車と同じで、急発進・急停車を繰り返すと燃費が悪化します。またしてもコスト高です。電力が余っている地域からもらってくる、というのもあります。IT技術の進展と不可分な「電力網をうまくマネジメントする」技術は、再エネ普及が進んだ国からどんどん発展していきます。実際ドイツなどは、電力網の安定化技術で他国の先を行こうとしています。国ではありませんが、米国のカリフォルニア州なども新技術の試験場となっています。日本の電力マネジメントは、停電率の低さからも他国から高く評価されています。追加の設備投資は必要となりますが、日本ならやれるのではと期待を抱いています。余った電気を貯めて、必要な時に使う・売るバッテリーも忘れてはいけません。リチウムイオンバッテリーの価格は、電気自動車の普及により低下が予測されています。そして電気自動車の普及は、ドイツをはじめとする欧州各国でエンジン車販売禁止の動きにより、加速する可能性があります。再生可能エネルギーの不安定性を、ガス火力・電力網の運用・バッテリーで賄えるそんな時代もそう遠くはないかも知れません。
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リチウムイオンコスト(左)とEVバッテリー需要(右)出典:Bloomberg New Energy Finance

どんな日本にするか絵を描くということ

原発ゼロ、それは痛みを伴います。自治体にとっては「電源立地地域対策交付金」は重要な財源です。雇用の問題もあります。原発のある地域にとって、原発は重要な経済の柱となっているのです。一方で、原発を擁することが、移住者の流入の妨げとなっている可能性もあります。地方に移り住み、新たに商売を始めたいという時、原発のある町を避けようと思う人も少なくはないでしょう。雇用については、運転のための雇用は損なわれますが、廃炉のための雇用が生まれると考えてみてはいかがでしょうか。調査会社マーケッツアンドマーケッツによると、昨年の世界の廃炉市場規模は48億ドル、2021年には86億ドル(約1兆)だそうです。そして現在稼働している原子力発電所の機齢をみる限りこの先20年は拡大市場といえます。資源エネルギー庁によると、現在日本で廃炉が決まっているのは15基。そして、電力会社の試算を積み上げると、福島第一原発1〜4号機を除く日本の今後の廃炉市場は3兆円とのこと。既に29基の廃炉に着手ししているイギリスのNDA(英国原子力廃止措置機関)によると、イギリスが今後120年間に必要とする廃炉費用は、970億ポンド(約14.6兆円)から2,220億ポンド(約33兆円)に上るとのこと。
という訳でイギリスは、中小企業を取り込んだ廃炉サプライチェーンを育成し、輸出していこうという目論見で進めております。日本も、今後どのような技術・ビジネスで世界をリードしていくのか、その位の絵を描いた上で「原発ゼロ」を進めてはいかが、と思う次第です。
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出典:UK Trade &Investment, 英国の原子力廃止措置技術要覧:英国内・海外で証明された技術力

最後に、エネルギー安全保障について

日本が原発を導入してきた大きな理由が、「ある国にとって、市民生活、経済産業活動のために、必要十分なエネルギーを合理的な価格で確保すること」という「エネルギー安全保障」の考えによるものです。日本は資源を外国に依存しているため、少しでも多様化してリスクを分散しようという考えです。しかしながら、核燃料サイクルの実現性が不透明になった今、原子力が準国産エネルギーとして、エネルギー安全リスク低減に役立つのか疑問が残ります。現在発電量の大半を担っているLNGについては、現在の豪州・中東・東南アジア・ロシア・アフリカに加え、北米にも調達先を拡大しようとしています。原発ゼロ如何にかかわらず、官民一体となって「エネルギー安全保障」に取り組んでいることは、間違いありません。
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出典:JOGMEC, 天然ガス・LNGに関する最新動向
5 コメント
長森宏太
10/4/2017 05:12:55 am

バランスの取れた記事ですね。すごい。
しかし、世の中はどうなっていくか?先日シンギュラリティ大学のWSを三日間聴きました。シリコンバレー系のビジネス大学です。
各論では色々あるのですが、日本で見ても、他律的なエネルギーより燃料代ゼロの自然エネが望ましいのに議論の余地はないと思います。(まあ、天候異変は他律的要因という見方もありますが…)

一方、医療、ナノ、交通、金融などは指数関数的にデジタル化・AI統合型に。
みな電気を使う技術ですから、電気に対する品質、セキュリティが求められるのかな?どういう世の中を想像するかということだと思います。

返信
News Gimon
10/4/2017 06:26:16 pm

コメントありがとうございます。電気の品質については、現在は絶対解はありませんが、蓄電と言うことになるのでしょうか。日本の場合、揚水の容量もありますし、バッテリーコストもまだまだ低下が期待できます。電力融通や配電網の下でもやりとりできるようになると思います。デジタル化を進めている主な企業は、RE100のメンバーであったりするので、日本が再エネに取り組まないことで、これらの企業が日本の設備投資を控えることが危惧されます。グリーン証明の取得等で、再エネ100になるよう帳尻合わせるのは限界があると思われますので。

返信
山本 博康
3/24/2018 12:36:00 pm

「原発ゼロって本当に可能ですかというギモン」「どんな日本にするか絵を描くということ」「エネルギー安全保障について」
・まったく新しい発想の再生可能エネルギーを考えてみませんか!
1、 エネルギー源はエネルギー消費地の排熱(冷房・冷蔵・冷凍・冷却、排熱エネルギーは投入エネルギーの数倍)・太陽熱と水素の燃焼熱、高温槽は容器に封入した潜熱蓄熱材(例えば80℃)を用い一定温度にする。低温槽からの放熱は地中(15~20℃)へ
2、 温度差50℃程度の高温槽と低温槽の最高部で高温槽⇒低温槽、最下部で低温槽⇒高温槽に気体を移動する仕組みを作る
3、 水中の気体は大気中の気体の775倍のエネルギー密度、場(大気中・水中)の違いでエネルギー生成が可能となる
4、 高温槽と低温槽の気体の浮力差は0~50℃の温度差で183g/ℓ、高温槽と低温槽の総浮力差で駆動力を生成
5、 駆動力を用いて発電、負荷変動を吸収するために必要な容量のバッテリーを設ける
6、 余った電気で水を電気分解し水素を生成し、タンクに蓄え、高温槽の熱量が不足時に燃焼し熱エネルギーを補給、熱⇒電気⇒水素⇒熱のエネルギーサイクルを構築
7、 地産地消で年間を通して安定した発電が可能な新再生可能エネルギー、送電線も不要、地域電力ネットワークを構築することでより安定したエネルギーと成りえる
8、 日本発の新産業、国内・米国・中国・ドイツ・韓国の特許取得済み
9、 脱原発・地球温暖化阻止は全人類の望み、放射能汚染・廃炉・異常気象

返信
山本 博康
3/24/2018 12:48:04 pm

・後半が削除されたので追加送信します
9、 脱原発・地球温暖化阻止は全人類の望み、放射能汚染・廃炉・異常気象・海水面上昇などの多くの問題があり、脱原発・地球温暖化阻止の具体的な方法と成りえる
10、個人では実現不可能ですので、実現頂ける企業・大学・関連機関を探しています
詳細内容は下記参照願います。
・FAAVO磐城国: https://faavo.jp/iwakinokuni/project/2480
・Facebook: https://www.facebook.com/profile.php?id=100013560331776
・Twitter: https://twitter.com/q1Pv8wmpzN1Y1Qy
以上、宜しくお願い致します。

返信
田中雄三 link
4/29/2018 01:24:36 pm

下記の視点からも、原発ゼロが可能か考えてみてはどうでしょう。
日本政府は「地球温暖化対策計画」で、2030年度に温室効果ガスを26%削減するとともに、2050年までに80%の排出削減を目指すことを記載しています。原発ゼロでも26%削減は可能と思いますが、80%削減は困難と考えます。
例えば、ドイツは原発を廃止し、温室効果ガスを80~95%削減するシナリオを発表しています。しかし、日本とドイツではエネルギー事情が異なります。原発ゼロでの80%削減は、日本の方が遥かに困難と考えます。詳しくは、下記ウェブページを参照下さい。
http://ytanaka.g.dgdg.jp/nuczero/newpage50.html
野党4党は原発ゼロ基本法案を衆議院に提出していますが、原発ゼロを主張するなら80%削減が実行できることを示すべきでしょう。一旦廃止した原発を、80%削減のために復活したら、あまりに愚かなことです。

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